2007年02月20日

●準備に膨大な時間をかける指揮者(EJ第1469号)

 カルロス・クライバーの指揮ぶりを見ると、己の閃きを信じて
一瞬に燃え尽きる音楽を創り出しているように見えます。その指
揮ぶりは舞うように軽やかであり、己の天才的な感覚のおもむく
ままにやっている――そのような感じに見えます。
 しかし、クライバーは準備に信じられないほど時間をかける指
揮者なのです。そのひとつの逸話をご紹介します。それは、19
79年にウィーン・フィルを振ってブラームスの交響曲第4番を
演奏したときの話です。
 クライバーのレコード・デビューは、1973年のドレスデン
における歌劇『魔弾の射手』≪全曲版≫なのですが、その翌年の
1974年にはじめてウィーン・フィルと組んでベートーヴェン
の交響曲第5番『運命』を振っています。
 ウィーン・フィルというのは、気位の高い難しいオーケストラ
であり、それをはじめて振るにはそれなりの手続きが必要といわ
れます。それだけに、クライバーのようなかたちで簡単に公演が
決まるということは異例なのです。これは、クライバーの希望と
いうよりは、ウィーン・フィルの方がクライバーに惚れ込んだと
いう方が当たっていると思います。ウィーン・フィルにとってこ
んなことは稀有なことなのです。
 さて、コンサートでブラームスを振るのは、12月であるのに
クライバーは7月にウィーン入りしているのです。そして、楽友
協会でブラームスの自作譜の研究に没頭したといわれています。
このように書くと、彼がこの曲の研究をそのときにはじめたと考
えるかもしれませんが、彼はそれよりも6ヶ月も前からこの曲の
研究をはじめていたというのです。それほどの時間をかけて準備
し、12月のコンサートに臨んでいるのです。
 結果はすばらしいものだったのです。ディ・プレス紙はユリウ
ス・カエサルの言葉をもじってこのコンサートのことを「クライ
バーは来た、見た、勝った」と報じ、他のマスコミもそれに準じ
た報道をしています。
 このときの演奏ではありませんが、クライバーの指揮によるブ
ラームスの交響曲第4番ホ短調は、次のCDで聴くことができま
す。1980年3月にムジークフェラインで収録された演奏であ
り、クライバー49歳のときの演奏です。
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  ブラームス/交響曲第4番ホ短調作品98
  カルロス・クライバー指揮/ウィーン・フィルハーモニー
  管弦楽団 グラモフォン[D]UCCG7011
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 このCDの演奏に関して音楽評論家の諸石幸生氏は次のように
述べています。一部をご紹介します。
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  演奏を耳にしてまず実感するのは、感じる人、それも痛いほ
 どの切実さで作品の心を感じる人、それがクライバーであると
 いう事実である。(一部略)
  美しい演奏であることは論を待たない。しかし、クライバー
 の指揮で再現される交響曲第4番は、生きるか死ぬかといった
 切実な気配が充満しており、ソファーに深々と身体を横たえて
 聴けるような代物ではない。        ――諸石幸生氏
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 この作品は1980年代になってからですが、クライバーが指
揮界に華々しく登場したのは1970年代前半――正確には19
73年のことです。この1973年に『レコード芸術』(音楽の
友社刊)が批評家30人による「現代名指揮者ベスト・テン」を
次のように選んでいます。
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  1.ベーム          6.ムラヴィンスキー
  2.カラヤン         7.小沢征爾
  3.バーンスタイン      8.メータ
  4.ショルティ        9.アバド
  5.ブーレーズ       10.サバリッシュ
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 まさにベテランから若手まで多士済々の指揮者が名を連ねてお
り、この中に割って入るのは容易なことではないのです。しかし
カルロス・クライバーは、次の4曲の演奏をやっただけで、ベー
ム、カラヤン、バーンスタインの中に分けて入ったのです。それ
ぞれに付けられた広告コピーが実に印象的です。
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 1.ウェーバー作曲
   歌劇『魔弾の射手』≪全曲≫ ・・・・・・ 1973
   バイエルン国立歌劇場管弦楽団・合唱団
    ――噂のカルロス、ここに登場。――
 2.ベートーヴェン作曲
   交響曲第5番ハ短調『運命』 ・・・・・・ 1975
   バイエルン国立歌劇場管弦楽団・合唱団
    ――この奔流、巌をもおし流さんか!――
 3.ヨハン・シュトラウス作曲
   喜歌劇『こうもり』≪全曲≫ ・・・・・・ 1976
   ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
    ――いいぞ、カルロス、言うことなし。――
 4.ベートーヴェン作曲
   交響曲第7番イ長調 ・・・・・・・・・・ 1976
      ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
    ――誰だって信じざるを得ないこの天才。――
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 現在、CDショップでは、「追悼!カルロス・クライバー」の
コーナーが設けられているところがありますが、上記の2と4が
セットになったCDがあり、これはお買いトクです。第5番と第
7番の従来のイメージを一新させる快演です。ジャケットは、添
付ファイルを参照してください。
                 −− [クライバー/04]

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posted by ここから at 04:42| Comment(0) | TrackBack(0) | クライバー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする