2007年09月28日

●「ピロリ菌」とはどういう細胞か

 「ピロリ菌の感染者は胃がんのリスクが高い」――こういうことがよくいわれています。しかし、「ピロリ菌」の正体が何であり、それはどのようにして感染するのか、感染しているかどうかはどうして判断するのか、感染したらどうするのか――こういうことについてほとんど分からないでいるケースが多いと思います。そこで、しばらくピロリ菌について研究してみましょう。
 まず、ピロリ菌の正体は何でしょうか。
 ピロリ菌は、人間の胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどとの関連が注目され、この20年ほどの間に急速に解明が進んだ細菌です。その正式名称は次のように大変長い名前が付いています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
      ヘリコバクター・ピロリ/Helicobacter pylori
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 「ヘリコバクター」というのは「ラセン状の細菌」という意味であり、「ピロリ」とは胃の出口付近の幽門部のことをいうことばです。ヘリコバクター属の細菌は、その培養が困難であり、科学や医学の歴史において長く表舞台に登場してこなかった細菌なのです。
 しかし、ピロリ菌は胃潰瘍や胃がんの部位から発見されることが多く、胃の中に生息しているのではないかと思われていたのです。つまり、ピロリ菌の栄養源は人間の胃の細胞ではないかという疑いが持たれていたのです。
 しかし、胃の中は強い酸性を有しており、通常の細菌ならとても生きていられる環境ではないのです。そのため「胃には細菌は生息できない」という説が長く信じられてきたのです。
 これは後でわかったことですが、ピロリ菌は尿素を分解してアンモニアを作り、酸を中和する能力を持っているので、酸性の強い環境でも生き伸びることができたのです。
 ピロリ菌には病原性を発揮するものと、あまり影響を与えないものがあるのです。病原性を発揮する強い菌は胃の細胞に付着して炎症を引き起こし、潰瘍の原因になる傷をつくります。または、その菌の持つ酵素の化学反応によって胃の細胞が壊され、それが潰瘍やがんの原因になります。
 
●ウォーレンとマーシャルのノーベル医学生理学賞

 細菌の発見は顕微鏡の進化に関係があります。顕微鏡の精度が上った19世紀の後半にドイツの細菌学者のベッチャーは胃潰瘍の部位に細菌がいることを発見してそれを論文に書いて発表しています。1875年のことです。
 この菌が現在のピロリ菌であったかどうかはわかっていないのですが、胃には細菌は住み着かないという当時の常識によって、誰も胃潰瘍と細菌の関係を本気で調べようとはしなかったのです。
 その後、1892年になって、イタリアの解剖学者のビゾゼロがイヌの胃の病理標本中にラセン状の細菌が存在していたことを報告しています。これが記録に残る最も古いヘリコバクター属の細菌の記録ですが、これはピロリ菌そのものではなかったのです。しかし、発見者の名前をとって「ヘリコバクター・ビゾゼロ二ー」と名づけられたのです。
 しかし、それでも細菌学界では、「胃に細菌がいるはずはない」という常識を固く信じており、胃潰瘍などから細菌が発見されるという報告があっても、それをまともに受け取らず、ピロリ菌が発見されるまで、さらに100年もの年月を必要としたのです。それまでは、胃の潰瘍の原因としては、胃酸が引き起こすものという説が有力だったのです。
 しかし、オーストラリアの病理学者であるロビン・ウォーレンは、ロイヤルパース病院で、胃炎患者の生検標本の中に細長く曲がった細菌がいることを発見します。ウォーレンは同じ病院のバリー・マーシャルという消化器科の若手医師と協力して、この細菌について調べ始めたのです。
 そうすると、胃炎だけではなく、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、胃がんにおいても同じ菌が次々と見つかったのです。しかし、この未知の菌があることを証明するには、菌を分離・培養する必要があるので、これに取り組んだのです。しかし、それは簡単には成功しなかったのです。
 培養期間は2日間でやることにし、何回も繰り返したのですが、そのつど失敗を重ねたのです。1982年のイースターでの出来事です。培養実験がたまたま4月14日のイースターの休日にかかったために、培養期間が5日間に延びてしまったのです。
 しかし、この偶然によって、2人は1ミリほどのピロリ菌の細菌集落をはじめて認めることができたのです。この報告は「胃炎患者で認めたピロリ菌の存在」と「ピロリ菌培養成功」として、1983年の英国の医学雑誌「ランセット」で紹介されたのです。
 しかし、それでもピロリ菌の存在に疑問を持つ学者は多くいて、その存在が受入れられるまでにさらに十数年を要したのです。しかし、このウォーレンとマーシャルの研究は2005年のノーベル医学生理学賞に輝いたのです。1982年の研究成果が13年も経ってはじめて認められたのです。昔からの思い込みや常識がいかに新しい発見を遅らせるかの例であるといえます。  以上


<<ラクトフェリンについて>>

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 仮に定年後に、お金あって、時間も自由になるのに、健康でなかったらどう
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