2007年10月05日

●「コッホの原則」をすべてクリアする

 ピロリ菌は、1892年にイタリアの解剖学者ビゾゼロによって発見されていながら、結局、ウォーレンとマーシャルが2005年にノーベル医学生理学賞を受賞することによってその存在がはじめて認知されるという、発見にゆうに一世紀を超える年月がかけられているのです。
 細菌学には「コッホの原則」といわれるものがあります。コッホはドイツ人で、19世紀の細菌学の歴史に名を残している人物です。「コッホの原則」とは次の4項目からなっています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
   1.ある病気において、ある決まった微生物が検出される
   2.その微生物を病変部位から分離・培養することが可能
   3.その微生物を他の動物に感染させ同じ病気を引き起す
   4.そのときに生じた病変部位にその微生物が検出される
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 ロビン・ウォーレンは、「胃炎の患者にある細菌がいる」という事実からピロリ菌の研究をはじめたのですが、これはコッホの原則の「1」に該当するのです。続いて、ウォーレンとバリー・マーシャルはその菌の分離・培養に取り組んでこれをクリアしています。これはコッホの原則「2」です。
 問題は、その細菌を他の動物に感染させて、同じ病気を引き起こさせることです。これはコッホの原則の「3」なのですが、マーシャルはこれを自分の身体を使って試したのです。
 66歳の慢性胃炎の患者から採取したピロリ菌をマーシャルは飲んでその症状を確かめたのです。その結果、マーシャルは次のように報告しています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 内服して2週間ほどの間、腹部不快、吐き気、頭痛、口臭などの症状を呈した。                 ――バリー・マーシャル
――伊藤真愼著、『ピロリ菌/日本人6千万人の体に棲む胃癌の元凶』
                        祥伝社新書/034
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 そして内服10日後に内視鏡検査を受けて胃炎を併発していることを確認、菌が病変部位に存在することを報告しています。1985年のことです。これはコッホの原則の「3」と「4」に該当し、この原則をすべてクリアしたのです。彼らの研究が認められたのはそれから20年後の2005年――ノーベル賞を受賞したときだったのです。

●ピロリ菌はなぜ胃に住みつけるのか

 ところで、ピロリ菌はなぜ胃に留まっていられるのでしょうか。
 胃にはかなり強い力で内容物を腸へ押し流す力が働いています。その力に逆らってピロリ菌が胃に留まっていられるのはなぜでしょうか。
 既出の伊藤真愼氏――四谷目メディカルキューブ内視鏡センター長はこれについて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(ピロリ菌は)体の端に4〜8本の鞭毛という細長い毛を持っており、これを一秒間に100回ほどスクリュー状に回転させて胃の細胞表面の粘膜の中を泳ぎまわることができます。その速度はかなり速く、一秒間に自らの長さの10倍程度の距離を移動可能です。そして、この鞭毛の回転方向を逆にすることで、前にも後ろにも進むことができます。
――伊藤真愼著、『ピロリ菌/日本人6千万人の体に棲む胃癌の元凶』
                        祥伝社新書/034
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 このようにピロリ菌は胃に住みつこうとし、それを可能にする能力もあるのです。したがって、人の一生に近い長い年月胃に留まっている可能性が高いのです。それにピロリ菌は一度感染すると、長期間にわたって感染状態が続き、自然には排除されにくい細菌なのです。
 ピロリ菌が長い間胃に留まっていると胃の細胞を慢性的に傷害することで、潰瘍やがんをはじめとする病気を発症する恐れがあるのです。そのため、感染して長い潜伏期間の後にゆっくりと発病する「スローウィルス」になぞらえて
「スローバクテリア」ともいわれています。
 ピロリ菌が胃の中に留まっていられるのは、単に鞭毛の運動だけではないのです。それはピロリ菌がウレアーゼという酵素を持っているからです。ウレアーゼは体内にある尿素を分解し、二酸化炭素とアンモニアを生成します。そのアンモニアは、酸性の環境を中和するのに役立つのです。
 アンモニアはアルカリ性であり、ピロリ菌のいる周囲を中和して、強い胃酸から身を守る環境にすることができるのです。しかし、皮肉なことに、ピロリ菌の身を守るウレアーゼの存在が、いくつかの検査法によって、ピロリの生息の有無を発見するのに役立つのです。
 ピロリ菌が人に感染するのは、乳幼児期であることが多く、成人の感染は少ないといわれます。したがって、何はともあれピロリ菌の有無を検査することが必要なのです。以上                


<<貧血の予防・改善効果>>

前回ラクトフェリンの各機能について整理しましたが、今回はそのうちの貧血の改善作用に関してお話したいと思います。

ラクトフェリンは発見当初、その粉末が赤色なので「赤色たんぱく質」と呼ばれていましたが、後に「ラクト=乳」の中の「フェリン=鉄」と結合するたんぱく質、ということから名づけられました。

ラクトフェリンは鉄に強い親和性を持ち、ラクトフェリン1分子が鉄イオン2分子を結合します。結合した鉄を運搬し、体内の細胞で離すという働きを持ちます。鉄摂取量を制限して貧血を起こしたラットはラクトフェリン結合鉄(鉄50mg)で快復しますが、同量の硫化鉄では快復せず、ずっと多量に−−鉄200mgが必要であることが示されました。

このラクトフェリンの鉄分と結合しやすいという特質は、細菌が生きていくために必要な鉄分を奪うことにより増殖を抑えたり、死滅させる働きも現しますが、この働きについては別のところでお話します。

 ラクトフェリンは、鉄の吸収を調整する作用があります。体の中で鉄が不足している時には吸収を促進し、十分な場合は吸収を抑制するように働くことで女性に多い貧血の改善を促します。


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posted by ここから at 07:12| Comment(0) | TrackBack(0) | ピロリ菌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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